『銃・病原菌・鉄(上・下)』ジャレド・ダイアモンド著を読むと、世界の人類史を決定付けたのは、農耕が人口を爆発させ、家畜生産が病原菌への抵抗性を生み、余剰産物や人口爆発が人間の社会構造を作り出し、さらにはユーラシア大陸が東西に長いことが、農耕の普及を容易にし、この大陸にたまたま、栽培可能な植物、家畜化可能な哺乳類の多かったことが、他の大陸に比べて有利に働いたこと、そしてこれらの要因が小さかった他の大陸の人類と、ユーラシア大陸の人類が出会った時に、人口と病原菌の抵抗性によってその結果はおのずと決まっていたことが、人類史を決定づける要因として説明されている。つまり、今の人類の競争関係を決定づけたのは、どこ(どこの大陸、環境)にいたかということだけである。だれ(どの人種※)がそこにいたかではない(詳細は、きちんと読んで欲しい。※人種というのは便宜上使用しているだけで、人はそんな簡単に区別できるようなグループにわかれているわけではない。)。

このような人類史を決定づける要因が、(当たり前だが)人種ではなく、ある場所にいたことが重要だとわかったことが、この本を読んだ最大の収穫ではない。これまで、少なくとも私の中には、『ヨーロッパ人が、アフリカやアメリカを侵略できたのは、文明や技術が発達していたからだ』というのは、普通の感覚であった。しかし、『なぜ、その文明や技術の発達が、アフリカ人やアメリカ人の側でなかったのか?』という問いに転化することはなかった。つまり、この本を読んだ最大の収穫は、新しい問いを得たことだ。『なぜ、人類史を決定づけるような差異が、人種間に生まれたのか?』、そしてそれに派生する問いを(ここには書かないが)たくさん得たことだ。
本を読むことの意味、それは
『知識を得るだけではなく、新しい問いを得ること、見つけること』。
読んだ本に書いてある問いである必要はない。
さぁ、大学時代に、本を読もう。